「クラユカバ」神田伯山は降板も考えていた?黒沢ともよ&芹澤優は独特のしゃべりに苦戦
長編アニメ映画「
本日スピンオフ作品の「
中性的なサキを演じた芹澤は最初どのように演じたらいいのか悩んだのだとか。作品を観終えた後は「ヒロインしてたな」と感じたそうで、「細かいところで出てくるサキの表情が女の子らしくて」とうれしそうに語る。そして「この世界の中で自分の演じた役が生きててキュンとした」と目を輝かせた。塚原監督とは17年の付き合いがあり、塚原監督に伯山を紹介した人物でもある活動弁士の坂本は「クラユカバ」「クラメルカガリ」両作に出演し複数の役を演じているのだと明かす。多数の役を任されたことに「(活動弁士)冥利に尽きますよ。人件費対策かもしれませんけど」と述べると観客からは笑いが起こった。続けて塚原監督の苦労に思いを馳せ劇場公開を改めて喜びつつ、伯山の演技を「よかったでしょ?」と観客に尋ねると大きな拍手が送られた。
主役という大役を任された伯山は、アフレコに苦戦もしたのだそう。古典芸能は再放送であると表現し、普段の講談も繰り返すことは苦ではないと話しつつも「今回初めて苦になりまして」と苦笑いした。「クラガリに曳かれるな」というセリフにはこだわったそうで、一度OKをもらった後監督に「もう1回お願いできますか」と申し出たことを語ると、塚原監督は「5、6回やりませんでした?」と笑いながらツッコミを入れた。伯山とのかけ合いが多い黒沢は「尊敬してやまない方でしたので、共演させていただきうれしかった」とニッコリ。黒沢は先に収録をした伯山の声を聞きながらアフレコに挑んだそうで、その際の心境を「勉強しているみたい」と述懐した。
伯山を起用した際のことを塚原監督は「冒険だったんですよ。一番セリフが多いキャラクターを声優じゃない方に(オファーするのは)」と吐露する。不安はあったものの、最初のセリフを聞いた瞬間に「『荘太郎がいる』と僕とか周りのプロデューサーが息を呑んだ」とその声を絶賛した。しかし伯山は収録を3分の1ほど終えたところで「(荘太郎役は)中島ヨシキさんでいいんじゃないか」と発言したこともあったそうで、実は降板も考えていたことを暴露。当時はこの事態に塚原監督も「声優は本業じゃないですし無茶を言ったな」と反省しつつも、改めて伯山と話し合って続けてもらえることになったのだと振り返った。なお一度演技のコツを掴んでからは、伯山の収録はスムーズに進んだそうだ。
「クラユカバ」の独特のセリフ回しには、声優として活躍する黒沢と芹澤も苦戦したと明かした。塚原監督の作品初参加の黒沢は「(芹澤)優ちゃんと一緒に収録させていただいたとき、私は『クラガリに曳かれるな』しかセリフがございやせんで……」と話し始め、そのセリフはテイクを重ねたのだと語る。もともと落語や講談は好きだったとのことで、普段アニメでは演じない歌うようなセリフ回しには「しゃべってて気持ちいい」と新たな挑戦を歓迎していた。黒沢が芹澤に「どうだった?」と尋ねると、芹澤も「テンポやリズム感でセリフを言うのが慣れてなくて」と苦笑い。スタッフに落語を見るようアドバイスされたことから、勉強しながらリズム感を自身に落とし込んだと明かす。そして「食らいついていくような感じで収録させていただきました」と努力を伝えた。序盤のかけ合いを塚原監督が褒め称えると、芹澤は「初めて聞きました! うれしい!」と小さく跳ね上がった。なおオーディションでは黒沢がサキ役、芹澤がタンネ役を受けていたのだそう。本人たちは配役が逆のイメージだったそうだが、塚原監督の直感で現在のキャスティングに決定したことも明かされた。
構想から約10年をかけて公開された「クラユカバ」。自身初挑戦の長編アニメが声優陣の声で彩られていくアフレコを「この世界に音がだんだん出来上がっていくという過程が心地よかったです」と笑顔を見せた。また企画が通らない時期や、クラウドファンディングを実施したことを振り返り「『クラユカバ』は完成していない状態が長年自分の中で普通だった」と制作中の日々に思いを馳せる。その長期にわたる制作から、公開たことがまだ信じられないといった様子で「知らない世界に来ているよう」と話した。
舞台挨拶も終盤になり、伯山と塚原監督からはファンへメッセージが贈られる。伯山は現代がクリーンな世の中になっているという所感を話しつつ「我々人間というのはどうしても光もあれば影もある。埃も必ず叩けば出てくるもの」と語り出す。そして「この世の中の“クラガリ”というものが実はけっこう面白い」と魅力を伝えた。続いてコメントを求められた塚原監督は「長かったですね」としみじみ呟き「どうにかこの場に辿りつくことができました」と関係者に感謝を述べ「もう1本『クラメルカガリ』というのもありますので、ぜひそちらも一度併せてご覧いただけたら」と深く頭を下げた。最後に塚原監督が続編の可能性を尋ねられると「この作品がもっと盛り上がっていけば作りたい」と意欲を見せる。伯山にも出演の可能性が匂わされると、伯山は今回の苦労を思い出したのか「荘太郎が死んでる可能性が」と冗談めかしながら逃げ越しの姿勢を見せ会場を笑いでいっぱいにし、舞台挨拶は幕を閉じた。
映画「クラユカバ」
全国上映中
スタッフ
原作・脚本・監督:塚原重義
キャラクターデザイン:皆川一徳
特技監督:maxcaffy
操画監督:アカツキチョータ
美術設定:ぽち
美術監督:大貫賢太郎
音響監督:木村絵里子
音響効果:中野勝博
音響制作:東北新社
音楽:アカツキチョータ
主題歌:チャラン・ポ・ランタン「内緒の唄」
アニメーション制作:チームOneOne
配給:東京テアトル、ツインエンジン
製作:クラガリ映畫協會
キャスト
荘太郎:神田伯山
タンネ:黒沢ともよ
サキ:芹澤優
指揮班長:佐藤せつじ
松:狩野翔
稲荷坂:坂本頼光
映画「クラメルカガリ」
全国上映中
スタッフ
原作・脚本・監督:塚原重義
シナリオ原案:成田良悟
主題歌:オーイシマサヨシ「僕らの箱庭」
アニメーション制作:チームOneOne
配給:東京テアトル、ツインエンジン
製作:クラガリ映畫協會
キャスト
カガリ:佐倉綾音
ユウヤ:榊原優希
伊勢屋:大塚剛央
栄和島:細谷佳正
シイナ:森なな子
飴屋:悠木碧
※塚原重義の塚は旧字体が正式表記。
※記事初出時、本文に誤りがありました。お詫びして訂正いたします。
(c)塚原重義/クラガリ映畫協會