――どのように『宇宙兄弟』という作品は誕生したのですか?
小山:最初に宇宙というテーマを持ってきたのは担当編集でした。
『ハルジャン』、『ジジジイ』に続いて何を描こうかな、という話し合いの時に「宇宙の漫画はどうですか?」って。
佐渡島:向井万起男さんの著書『君について行こう―女房は宇宙をめざした』を読んだのがきっかけです。 小山さんは、あまり多くの人が描いていないジャンルをおもしろく描けるタイプの作家さんだから、宇宙はいいかもしれないと思ったんです。取材をするのも楽しそうですし。
小山:『宇宙兄弟』を描き始めたら、すぐ現実世界でもJAXA(宇宙航空研究開発機構)が宇宙飛行士の選抜試験を告知しました。 僕はこの時期に選考があるとは知らなかったんで、うまくタイミングが合ったのは完全な偶然なんですよ。
――第一話から印象的なエピソードが多いですが、何か元になった体験などは?
小山:マイクで音を収集するシーンは、昔デザイン学校の先生から聞いた話を元に考えました。「そんな子供っておもしろいなぁ」とずっと記憶していたんです。 UFOをムッタたちが目撃した部分は、当時自分でもUFOを見た気がしたことがあって……。 あ、こんなこといきなり言ったら変な人みたいですけど…。
佐渡島:(笑)
小山:その頃は埼玉に住んでいて、朝の川沿いでした。もちろんハッキリ見たわけじゃなく「そういやなんか見たな」「あれUFOちゃうか?」という程度でしたけど。 時期的には『宇宙兄弟』のネームに入ったか、その前くらいだったかと思います。そんな体験があのエピソードに生かされています。 それとサッカーネタが多いのは、僕がサッカーをやっていたからですね。第一話に関しては「ジダンが頭突きしている頃に子供たちがUFOを見た」シーンが先に決まって、そこから周りの部分を肉付けしていきました。