――主役が"兄弟"という切り口は最初から決まっていましたか?

小山:そうですね。向井さんの本を読んでいて、ご夫婦の関係がすごくいいなって感じたんです。
自分が描くならどうするか考えた時、夫婦じゃなくて兄弟という形が浮 かんできました。宇宙に打ち上がる側と見送る側、先を行く弟と追いかける兄……そのお互いの気持ちを描いてみたいなと思ったんです。

――弟が兄より優秀という設定も当初からあったのですか?

小山:お話として兄が追いかける形にしたほうがおもしろいだろうと考えたんです。すると先に飛行士になる弟は、自然と兄に比べて優秀に見えるキャラになりました。

――兄弟なのに外見をまったく変えた理由は?

小山:「兄弟なんだから見た目も似ているだろう」というのは当然ありますけど、顔が似るとキャラも似てくるような気がしたんです。性格だけじゃなく見栄えも違うほうが、より対照的な兄弟として描けるかな、と考えました。

――独特なムッタの髪型には実在のモデルがいますか?

小山:よく「タレントの大泉洋さんがモデルでしょ」って聞かれますが、実は違うんです。
ムッタの外見を考えていた時、「ザ・ストロークス」というロックバンドのチラシが家にあって、そのギタリストがあんなモジャモジャ頭だったんですよ。 それを真似て描いてみてるうちに「モジャモジャの兄貴もおもしろいな」と思うようになって。日本人の顔立ちと黒髪にしたらムッタになりました。

――二人の名前はどうやって決めましたか?

小山:せりかのエピソードと同じで、音の響きを優先して決めました。
最初に決まったのは"ヒビト(日々人)"で、個人的になんとなく最後に「ト」が付いたらカッコいいというイメージがあったんです。 逆に"ムッタ(六太)"は僕の中でちょっと抜けてる、カッコ良くなりきれないイメージがありそうな気がして。木村拓哉の顔で「ムッタ」はないじゃないですか。 この二人ともに言えることですが、既存のキャラクターにあまりない名前を意識して名づけました。 たとえば"花道"といえば多くの人は『スラムダンク』の桜木花道を連想しますよね。そんな感じがいつかムッタたちにも出せればいいな、と思っています。

――ところで、ヒビトの髪の色は地毛なんですか?

小山:ええ、地毛ですね。ムッタと比べると描くのがラクです。

佐渡島:ベタとか塗らなくていいですもんね(笑)

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